SSブログ

映画は二度見るべき マルホランドドライブの体験 [映画]

年をとったということなのか、映画の2クール目を見ることが多くなっています。

以前は一度見たことのある映画を間違って2回目のレンタルをしてしまったとき、後悔することしきりでした。当然、一回見たことを忘れてしまうような映画は大して面白くないので、2回目借りて途中でデジャブーが起こって、またつまらない映画(2回もみる価値のない)をみて時間を無駄にしたことに対する悔恨の情というやつです。最大で3回目までしたことがあります。もっとも、そういった作品も反復してみるといい点もあったりしますが・・・。

マルホランドドライブは、2002年の公開作品。デイビット・リンチ監督作の新作で、面妖な雰囲気のPRもあり、「これは必見だー」と思って映画館に走ったのでした。ただ当時、とにかく年間百数十本もの映画を見ていた中の一本で、内容がよく分からずについていけず、おそらくは半分は眠ってしまったのかもしれません。そして狐につままれたような不思議な感覚とともに映画館を後にしたような気がします。この作品は2回以上見なければ理解できないだろうと思いました。当時、映画の半券持参でリピート1000円キャンペーンもやっていたわけですが、さすがにそこまではせずに、記憶の中に「なにか訳の分からない映画」として埋もれてしまったのでした。

その後も、レンタルショップなどでタイトルは何度も目にしましたが、「一度見た映画は二度は見ない」という原則のようなものがあって、再見には至りませんでした。とはいえ、大好きな作品は何度でも見るのです、実は。チャップリンの映画は、ひと作品数十回は鑑賞してきたほどですから。

今回借りることになったきっかけは、職場での同僚との会話で映画の話題になったことでした。そういえばマルホランドドライブって、訳の分からない映画だったけどすごい作品だよね(訳が分かっていないのに、すごいというのはただの世評のバイアスにほかなりませんが)っていう感じで。でも実はよく覚えていない・・・。

ということで、先日レンタル店でタイトルを目にして即レンタルとなった次第なのです。

18年ぶりの再見は、全く何一つ覚えていませんでした(やはり18年前は寝ていたのでしょう)。そして、同じように訳の分からない感覚に包まれました。仕方なく、映画解説サイトなどを検索して、本作の二重構造の理解を得たのでした。なんと、前半はすべて夢の中の妄想の世界を描いているということで、そのことは一応わかるようなヒントが提示されているものの、いつも通り普通に映画を見るスタンスで入るとその時点でつまずいてしまいます。そうはいっても、途中真夜中に怪しい劇場に行くシーンがあるのですが、これがあまりにも現実っぽくないので、さすがに夢の世界だということに気付くことはできるのですが。
解説をもとに3度目4度目と鑑賞してみると、幾重にもちりばめられた伏線が回収されていく感覚を味わえ、さらに夢(妄想)の世界ならではの独特のダーティーな世界観が描かれた稀有な映像だということに、遅ればせながら気づかされたのです。特筆したいのは、ファミレス「ウィンキーズ」のダンです。この人怖すぎです。

プロットを理解したうえでみると、実に「おぞましい」作品であることに気づかされます。リンチ監督のインタビューにもありますが、映画は感じるものだ(それは絵画や音楽と同様に)ということ、解釈は幾通りもあるんだろうと、その通りだと思います。はっきりいって観客は置き去りです。私のように一回だけ見て「なんかよく分からなかったけど、なにか凄そうだというのはわかった(要するに何もわかっていない)」という人は結構多いのではないでしょうか。監督もおそらくはそれでいいのだと思っているかもしれません。そもそもこの映画、一回みて理解できる人はおそらく皆無で、このシーンあのシーンの意味を反芻して考えて、ようやく「そういうことか!!」と理解できる(一部それでも理解できない)映画なのです。こんな映画だらけだったら疲れてしまいますよね。だからそういうジャンルはリンチ監督(古くはタルコフスキー、最近ではノーランなど)で十分かもしれません。

死ぬ前に2回目を見れて本当に幸せでした。18年間再見なく熟成させてしまったのですが、それはそれでよかったのだと思います。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0