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ブラックジャックによろしく 感想 [映画]

テレビドラマを毎週見続けるのは苦手だ。大体忘れてしまうこともあるし、一週間空くとテンションが下がってしまうのだ。しかし最近、旧作をレンタルして一気に見るという技を得た。なるほど、これだと効率的だ。しかし反面、一気に見てしまう中毒性があり、健康には悪い。

ブラックジャックによろしくは2003年の作品らしい。いかにも共演陣が若いのもそのせいか、緒形拳が渋いし、何故かチョイ役の綾瀬はるかが今と変わっていない!のも興味深い。主演の妻夫木聡が若い!そして演技が下手である(数ヵ所嚙みあり)。医療ドラマだが、かなり際どい所を攻めており、このジャンルでは良作といえるだろう。

主人公の研修医の妻夫木聡だが、この主人公の暴走気味の正義感溢れる?いやむしろ偽善感満々の人物に好感を抱くことはできないが、そもそもそういう設定であると思われる。そして、その主人公と対立の構図で描かれる医者たち(役者名でいうと、緒形拳、杉本哲太、原田芳雄、三浦友和、笑福亭鶴瓶、鹿賀丈史)は、正義感に溢れているでもなく、淡々と自分の仕事をこなすプロである。彼らは世の中や医者の世界の決まり事に対して、暴走気味に戦うことなどは決してしない。内心に燃えるものがあってもそれを抑え、淡々と自分の仕事に打ち込むのだ。本作はそんな医師たちの描き方が非常に秀逸である。

例えば、末期の患者を受け持って張り切って過剰医療や延命処置をする主人公に対して、余計なことをするなという外科上司の三浦友和。これは圧倒的に三浦が正しい。

メスを置いた心臓外科医の原田芳雄に対して、自分の受け持ち患者の手術を執拗に迫る主人公。その原田が、自分の信頼できる後継者に任せるといっているのに聞きいれない。ましてや、自身の所属する大学病院の心臓外科でオペ日程まで決まっているのに、患者を転院させようとする。ここまでくると、極めて危険な人物に他ならない。「〇〇先生じゃなきゃだめなんです」というのが一番質が悪い。その先生だって、永遠に生きているわけではないのだから。(しかも家族でもないのに患者への気持ちの入れようが気持ち悪すぎる)。

小児科の鹿賀丈史、混雑する救急外来で喘息重積の患児の受け入れを「拒否」する。その子は亡くなってしまったという設定だが、どのみち当院では受け入れ可能な状態ではなかったから仕方がない。よく24時間365日受け入れますという宣伝文句はあるが、仮にキャパシティをはるかに上回った場合はどうするのか、物理的に無理なのではないか。限られた陣容ではおのずと限界がある。能力が100のところで120までは頑張れても、200も300もできるわけはないのだ。妻夫木は別の日にキャパを超えて救急車を受け入れてひどい目に遭う。

この救急車受け入れ拒否が、本ドラマではごく普通に行われている。バイト先病院の医師である杉本哲太も、最終話で軽いノリで「むりー、他所行って(ガチャ)」みたいな感じで断っている。かといって、これらの医師は能力にも倫理観にも決して問題があるわけではない。割り切っていて、自分の本来の仕事だけに注力するのだ。主人公はこれに違和感をもつわけだが、鹿賀丈史のいうところの「第二段階」の医師になれるのかどうかだろう。いつまでたっても「第一段階」の正義感?溢れる医師でい続けたとすれば、それはただのバカであるように思われる。

バイト先の外科病院の外傷患者に対して、逃げ出してしまう主人公。確かに、ペイペイの医者に重症患者のオペを一人でやれという極めてブラックな病院ではあるが、それでもさすがに逃走はありえないだろう。これがこの主人公の抱える二律背反的は矛盾点だ。正義を振りかざす割には、バランス感覚に圧倒的に欠けているのだ。これは心臓血管外科教授(腕が悪いとされる)の言う通りである。

そんな危険な暴走青年の主人公に対し、周囲の医師たちも次第に共感し・・・という内容だが、実生活ではまずあり得ないだろう。せいぜい三浦友和のように、「あのなあ、お前なあ・・・」という感じになるように思われる。その辺の描き方もとてもうまい。

こうしてみると原作も気になるところだが、おそらく本物の医者の世界感というものをしっかり取り入れていると予想される。なぜなら、本作で登場するような医者は実際にいても不思議ではないキャラがそろっているからだ。

鹿賀丈史(小児科医)が言うところの、「私ね、実は子供はあんまり好きじゃないんですよ」。これは本当に当てはまる小児科医は結構いそうで、でもなかなかそんなブラックな本音を漏らせないわけですよ、はい。

伊東四朗演じる手術できない外科教授。これも本当にいるとかで、そこまでひどくはなくても、私の知る外科教授の何人かは、手術が下手であることで有名でした、はい。

新生児科医の笑福亭鶴瓶はミスキャストと思いきや、実際にこういう雰囲気のくたびれた医者、います。

若き日の加藤浩次、5浪したので、30歳の新人研修医という設定ですが、こういう人物もありがち・・・。

緒形拳の言葉が強く胸に残る。おおよそこのような内容であった

「正しいってことは、弱いということだ。強いということは、悪いということだ。」 合掌。
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